DTPのはじまり

 パソコン(パーソナルコンピューター)の普及は、印刷物の製造工程に変化をもたらし、DTPという概念が誕生しました。ここでは、DTPがどのようなものか、いつからはじまったのか見ていきましょう。

DTPとは

 DTPは「DeskTop publishing(デスクトップパブリッシング)」の略で、日本語では卓上出版と訳されます。主にパソコンで印刷物のデータを作成し、印刷機やプリンターなどで出力できる状態にすることを意味します。印刷物の製造工程をデジタル化することで、さまざまな作業が効率よくなったのです。また、印刷機を稼働させる前段階までパソコンで作業するといった意味で、「DeskTop Prepress」と呼ぶこともあります。

DTPの範囲

 「DTPの教科書」では、部数の多い印刷物を印刷機で製造するために、DTPデータを作成する工程をDTPであると考えて解説していきます。

DTPの歴史

 DTPという概念は、1985年にアルダスのポール・プレーナードが提唱しました。DTPの誕生に大きく貢献した技術として、アップルコンピューター(現アップル)のパソコン「Macintosh(現Mac)」やアドビシステムズ(現アドビ)が開発したPDL(Page Description Language:ページ記述言語)「PostScript」をあげることができます。

DTPの3要素

 Macintoshは、GUI(Graphical User Interface)と呼ばれるマウスで直感的にパソコンを操作できる機能を提供するとともに、ディスプレイで表示されている内容をそのままプリンターで出力して得られるWISIWYG(What You See Is What You Get:見たままが得られる)(第1の要素)を実現しました。さらに複数のフォント(書体)を搭載することで、DTPのプラットフォームとして地位を確立したのです。
 また、PDLの標準化(第2の要素)に向け、1982年にアドビシステムズは「PostScript」を開発しました。PostScriptで記述されたデータを解析するインタープリター搭載の出力装置は、機種が異なっていたとしても、DTPデータが同一であれば、同等の出力を可能にします。アップルのモノクロプリンター「LaserWriter NTX」は、PostScriptに対応した最初のプリンターでした。
 さらに、パソコンで文字や画像を配置するページレイアウトソフト(第3の要素)として、アルダス「PageMaker」も登場しました。レイアウトデータをPostScriptとして、出力装置に送信する機能を備えています。
 このDTPに必要な3要素が登場したことで、製造工程を支えるデザイナーや編集者などの間で、DTPデータが取り扱われるようになったのです。

 アドビシステムズの「Illustrator」によりカラー処理が可能となり、1990年頃からカラー印刷物のDTP化が普及しました。1992年頃からは生産性の面でも、旧来の専用システムを利用した場合と遜色のない、印刷物製造が可能になっています。

 今日では、DTP は世界の印刷物製造過程の標準となりましたが、パソコンやページレイアウトソフトが進化するとともに、出力環境も大きく変化しつづけています。