メディアとコミュニケーション

コミュニケーション管理はメディア活用の基本

 コミュニケーション手段は、交通手段によく喩えられます。両手段が同義語である言語も存在するほど似ているのです。ただし、自転車の軽便さと高速道路を軽快に走る高級スポーツカーの価値について、同じ基準で比較することに意義はありません。メディアにはそれぞれ特性があり、それに応じた利用方法が求められます。

 マスメディアを中心に情報が発信されていた時代から、「メディアミックス」といった手法があり、テレビやラジオではCM(Commercial Message)が放送され、合わせて印刷物であるチラシもポスティングされるプロモーションが実施されていました。

 メディアを複合的に利用しているのにも関わらず、メディアごとのさまざまなプロセス管理は、独立的な世界で運用されていました。広告代理店によりクリエイティブ戦略がコントロールされいても、メディアごとのコンテンツデータ展開が縦割りで始まると、他のメディアとの関連が保ちにくい状態になったのです。

 マスメディアが中心の時代では、広告主からは「印刷物のデザインをテレビCMに合わせて欲しい」といった要望もありました。このことから、同時進行が求められるメディアごとのコンテンツによるコミュニケーション展開は、統合的に管理する方法が必要です。

 インターネットに対応したモバイルが普及するに従い、「マスメディアにより告知を行い、モバイルからレスポンスを受信する」事例や、「印刷物では掲載しきれないコンテンツをWebコンテンツで補う」事例など、複数のメディアを横断的に使用する手法として「クロスメディア」が一般化しました。

 この傾向は、プロモーション事例だけに留まりません。「製品に同梱されるマニュアルだけでは掲載しきれないコンテンツをWebで補完する」事例や、「資格試験に関連する教科書によるコンテンツ提供と、eラーニングコンテンツを連携するサービスを展開する」事例など、当初から複数のメディアを組み合わせ、メディア特性を活かしたコンテンツを展開する手法が、市場に定着しています。

 言うまでもなくメディアによるコミュニケーションは、単一のメディアのみを考慮するだけでは賄えなくなっているのです。独立的なコミュニケーション展開は、市場動向とどんどん乖離していくでしょう。メディアの活用では、コミュニケーション管理が重要な要素となり、戦略的なコンテンツ管理が求められます。